第1章 第1話 FFXIVとの出会い

グリダニアのエーテライト 第1章

「どうせ俺の人生なんて、このまま何も変わらないんだろうな。」

そう思いながら、いつものように仕事を終え、アパートに帰る僕。僕は、田中、40歳の独身サラリーマン。仕事は毎日忙しいが、やりがいを感じることは少ない。単調な業務をこなす日々の中で、どこか心の中にぽっかりと穴が空いているような感覚を抱えながら生きている。

狭い1Kの部屋。都内のどこにでもあるようなアパートだ。ベッドと小さなテーブル、壁際に申し訳程度のキッチンが収まり、カーテンは薄汚れている。外から差し込む光はどこかぼんやりとしていて、部屋全体に薄暗さを漂わせていた。

周りの友人たちは結婚し、家庭を持っている者が多いが、僕は一人暮らし。誰かに頼ることもなく、家に帰れば静かな部屋でテレビやスマホを眺めて過ごす。休日には特に予定もなく、ベッドに寝転びながらYouTubeをだらだらと観るのが、僕の定番の過ごし方だ。

そんな僕にも、実は一つだけ心から熱中できるものがある。それがファイナルファンタジーシリーズだ。だが、ここに至るまでの道のりは平坦ではなかった。

幼少期の僕は貧しくファミコンを持っておらず、友達がFFIIIやFFIVをプレイするのを指をくわえて見ているだけだった。

大学に入ってから、状況は少しずつ変わり始めた。アルバイトを始め、少しずつお金を貯めることができた。

そして、ついに念願のプレイステーションを自分のお金で手に入れることができたのだ。

買ったその日、僕は早速『ファイナルファンタジーVII』を手に入れ、夢中でプレイした。クラウドやエアリス、そしてセフィロスと共に過ごした夜は、いまだに僕の中で鮮やかに蘇る。徹夜でプレイし、物語に没頭することで、現実の厳しさを忘れさせてくれる存在になった。

それからというもの、FFシリーズは僕の心の支えとなった。

FFVIII、FFX、どれも素晴らしい作品で、僕の人生の中で大切な瞬間に寄り添ってくれた。

しかし、FFXIが出たとき、僕は戸惑った。

オンラインゲームという新しい形に対して、どうしても手を出す勇気がなかった。知らない人と一緒に冒険するなんて、僕には難しいと感じたのだ。結局FFXIVも同じ理由で避けていた。オンラインの世界で他人と一緒にプレイするなんて、僕の性格には合わない。そう思い込んでいた。

そんな僕の心を変えたのは、YouTubeでのある日のことだった。休日、いつものようにベッドで寝転びながらスマホを見ていると、ファイナルファンタジーXIVの切り抜き動画がオススメに表示された。普段なら無視するところだったが、今回は何故か興味が湧き、タップしてしまった。

「FFXIVももうリリースして10年経つんだ・・・」

そんなことを思いながらその動画を見始めた。

画面に現れたのは、FFXIVプロデューサー兼ディレクターの吉田直樹だった。彼は情熱的に語り始めた。

「ファイナルファンタジーXIVは、ただのオンラインゲームではありません。我々はこのゲームで、ファイナルファンタジーというシリーズの魂を、次の世代に継承しているんです。プレイヤー一人ひとりがこの世界の主人公であり、みんなで一つの物語を紡ぎ上げていく。そういうゲームです。」

その言葉に僕は心を奪われた。今までのオンラインゲームに対する固定観念が、少しずつ崩れ始めた。

吉田はさらに続けた。

「FFXIVは、オンラインだからこそできる体験があります。仲間と一緒に冒険する楽しさ、自分のキャラクターが成長し、壮大な物語の中で役割を果たす喜び。これは他のRPGでは味わえない特別なものです。そして何より、ファイナルファンタジーの世界を、今までと違う形で体験できる。それがFFXIVの魅力なんです。」

彼の言葉一つ一つが胸に響いた。オンラインであっても、FFシリーズが持つ特有の世界観や物語は失われていない。それどころか、他のプレイヤーと共に物語を紡ぎ上げるという、新しい形のファイナルファンタジーがそこにあるというのだ。

「オンラインゲームが初めてでも、怖がらないでください。FFXIVは誰でも楽しめるように作られています。仲間と助け合いながら、一歩一歩進めば、きっとあなたもこの世界に魅了されるはずです。」

その瞬間、僕の心は大きく動いた。これまで避けてきたオンラインゲームに対する壁が、吉田直樹の言葉によって崩れ去っていくのを感じた。「オンラインゲームでも、FFシリーズの世界をまた冒険できるんだ」という思いが心に芽生えた。

気がつけば、僕はFFXIVの体験版をダウンロードしていた。

だが、そこに至るまでの道のりは、思っていた以上に複雑だった。

最初にYouTubeで吉田直樹が登場する動画を見つけたとき、僕はただの暇つぶしのつもりだった。仕事のストレスから解放された休日、ソファに沈み込み、スマホで何気なくスクロールしていると、なぜかFFXIVの切り抜き動画が目に飛び込んできた。普段ならオンラインゲームにはまるで興味がない僕が、なぜその動画を再生したのか、今でも不思議に思う。

その切り抜きだ動画をきっかけに、FFXIVの動画を見漁った。

画面に映る広大な世界、美しい音楽、そして何より吉田直樹が熱心に語る姿――彼の言葉には妙な説得力があった。彼はただのゲームプロデューサーではなく、FFXIVを「一緒に作り上げる仲間」としてプレイヤーを見ているようだった。

「FFXIVは、みんなで世界を作り上げていくんです」

と吉田は言った。

その瞬間、僕はなぜか心の奥にあった何かが動いたのを感じた。かつての僕は、FFシリーズに夢中になっていた頃の冒険心を忘れてしまっていた。現実に押し流され、日常に埋もれていた冒険への情熱が、吉田の言葉に触れた瞬間に再び蘇ったのだ。

でも、オンラインゲームには抵抗があった。見知らぬ他人と一緒にゲームをするなんて、想像すらしていなかった。それでも、なぜか吉田の言葉が頭の中で繰り返され、気がつけばしばらく使っていなかったPCを立ち上げ、FFXIVの公式サイトを開いていた。

体験版は無料だし、試してみるだけなら損はない。それに、僕の中でくすぶっていた

「何かを変えたい」

という気持ちが、自然とそのクリックを促していた。

こうして、FFXIVの体験版をダウンロードすることになった。それは、ただのゲームをインストールする行為ではなく、僕にとっては新しい冒険の扉を開く瞬間だった。今度は、もう躊躇することなく、その扉を押し開ける準備ができていたのだ。

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